語りかける花2007/03/26 22:39

本・語りかける花
 
 著者の志村ふくみさんは1924年うまれの染織作家。
1990年(平成2年)、重要無形文化財「紬織」の
保持者に認定され現在も活躍中の方。

 せんだって、滋賀近代美術館で紬織の着物の展示を見、
そこで買い求めた一冊。
文章というか言葉のつむぎ方も豊饒で気が乗り移っているからか
なまめかしいほど凝縮された言葉の宝庫。

 それはどこから来るのか。
昭和初期に柳宗悦が京都に陶器、木工、染織、とそれぞれの分野で
はじめから仕上げまで自分の考えを貫く、一貫作業による工芸運動を
はじめられ、それに実母が参加したところから
その流れをはぐくんでこられた自然な結果かなぁと思う。

 「草木の声をきき、草木の色をいただく」という姿勢。
よもぎ、れんげ、げんのしょうこ、いたどり、
からすのえんどうまで染め、それを
「生まれ出たばかりの野草の音色が糸にのり移る」とおっしゃる。

 毎年亀岡の梅林からトラック一杯の剪定梅をいただき、
「古木のなかばを燃やし灰をつくり、新枝を炊いて糸を染める。
淡い黄みのある紅色がにずからの灰汁の中でぽおっと赤みを帯び
紅色にうまれかわる。
植物が花を咲かせるために、樹幹にしっかり養分をたくわえ、
開花の時期を待つとき、残酷なようだけど、
その蕾もともに炊き出して染めると、
得もいわれない初々しい植物の精かと思われる色が染まる」

なんかすごい状況を表すことばです。

 曙草、木犀、沈丁花、くさぎ、紅万作、満天星(どうだんつつじ)、
藪柑子など
愛で自分の内に取り込む情念が圧巻!
自分にできる最大の力で自然の中に近づき、共存、
そして新たな作品をうみだす。

ほんとに凛としてたおやかで孤高なひと。

 消費者側にしかなれない自分が卑小すぎてわびしくなっちゃうけど、
ときには
機械織で十分だから織の着物を、
丁寧に大事にいつくしんで着ていきたい。

 いまは簡単に検索で物事を知りうることが出来、
なんだかわかった気に、間違って思うこともあるけど、
実際に直接見てさわって、動く空気にほほをなぜること。
そういうことが生活の奥行き、人としての深みにつながるだろう。